特養ケアマネのブログ
特養で働くケアマネが、介護のお金と制度を正直に伝えます
2026年5月23日公開|厚生労働省告示第88号(2026年3月13日公布)に基づき作成
2026年8月1日から、対象者は
月 約4,800円
の負担増になります(食費+居住費の合計/30日換算)。
ただし対象は「第3段階②」の方だけ。それ以外は据え置きです。
2026年の5月中頃、特養のケアマネの私の元に、数人のご家族から電話が入り始めました。
「関係ないと思う話だと思うんですが… 請求書の封筒の中に、料金が上がるみたいな書類が入ってて。これ、何ですか?」
「うちには関係あるの? 値上げって書いてあるけど、私の母は今のまま入所させてあげられるんでしょうか…」
「関係なくても、この書類にサインして返送しないとダメなんですか?」
「サインしてくださいって書いてあるけど、これって値上げに同意するってこと?」
「家族で他にやることはあるの? サインしたら、あとはお任せでいいんですよね?」
「兄弟で出し合うのも、もう限界なんです。8月から月いくらになりますか?」
こうしたご相談が、5月の請求書をお渡しした直後から、毎日のように続いています。
実はあの書類、見出しを見ると「負担限度額認定証」「特定入所者介護サービス費」など、漢字ばかりの専門用語が並んでいて、読んだだけでは「自分に関係があるのか」がわからないんです。
しかも書類には「該当する方はサインを」と書いてある場合もあれば、「全員に同意のサインをいただきます」と書いてある場合もあって、施設や自治体によって運用が微妙に違います。
その正体は、2026年8月1日から施行される介護保険の制度改正のお知らせです。
正式には「令和8年厚生労働省告示第88号」。2026年3月13日に厚生労働省から公布されました(介護保険最新情報Vol.1481)。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 値上げ対象 | 「利用者負担第3段階②」に該当する方のみ |
| 据え置き | 第1段階・第2段階・第3段階①の方は今までと同じ |
| 値上げ幅 | 居住費 1日+100円(月+約3,000円)/ 食費 1日+30〜60円 |
| 第4段階の方 | そもそも補足給付対象外。施設の基準費用額が変わる影響を受ける場合あり |
| 同意書の意味 | 値上げの可否を問うのではなく「制度改正の説明を受けた確認」 |
介護保険施設(特養・老健・介護医療院)に入所すると、毎月かかるお金は大きく3つに分かれます。
このうち、食費と居住費は所得の低い方には負担が大きすぎるので、所得や預貯金に応じて4段階(第1〜第3段階)に分けて、上限額(=負担限度額)を設けています。
本来の基準費用額と負担限度額の差額を介護保険から施設に支払うのが「特定入所者介護サービス費」、通称「補足給付(ほそくきゅうふ)」です。
この補足給付を受けるための証明書が、お手元にあるかもしれない「介護保険負担限度額認定証」です。
ここでいう「世帯」には、世帯分離している配偶者も含みます。
非課税年金(遺族年金・障害年金)も含めて判定します。
| 合計金額 | 該当段階 |
|---|---|
| 生活保護受給中 | 第1段階 |
| 老齢福祉年金受給中 | 第1段階(要件あり) |
| 82.65万円以下 | 第2段階 |
| 82.65万円超〜120万円以下 | 第3段階① |
| 120万円超 | 第3段階② ← 今回の値上げ対象 |
| 段階 | 単身 | 夫婦 |
|---|---|---|
| 第1段階 | 1,000万円以下※ | 2,000万円以下 |
| 第2段階 | 650万円以下 | 1,650万円以下 |
| 第3段階① | 550万円以下 | 1,550万円以下 |
| 第3段階② | 500万円以下 | 1,500万円以下 |
※生活保護受給者は預貯金要件なし
上記の上限を超えていたら、認定対象外(=第4段階扱い)になります。
厚生労働省告示第88号の数字をそのまま使った早見表です。
| 段階 | 2026年7月まで | 2026年8月から | 差額/日 |
|---|---|---|---|
| 第1段階 | 300円 | 300円 | ±0 |
| 第2段階 | 390円 | 390円 | ±0 |
| 第3段階① | 650円 | 680円 | +30円 |
| 第3段階② | 1,360円 | 1,420円 | +60円 |
| 部屋タイプ | 7月まで | 8月から | 月差額 |
|---|---|---|---|
| 多床室Ⅰ(特養等) | 430円 | 530円 | +3,000円 |
| 多床室Ⅱ(老健・医療院/室料あり) | 430円 | 530円 | +3,000円 |
| 多床室Ⅲ(老健・医療院/室料なし) | 430円 | 430円 | ±0 |
| 従来型個室(特養) | 880円 | 980円 | +3,000円 |
| 従来型個室(老健・医療院) | 1,370円 | 1,470円 | +3,000円 |
| ユニット型個室的多床室 | 1,370円 | 1,470円 | +3,000円 |
| ユニット型個室 | 1,370円 | 1,470円 | +3,000円 |
※第1段階・第2段階・第3段階①の居住費は据え置きです。
📊 特養の多床室Ⅰ・第3段階②の方
年間にすると約5.8万円のアップ。介護サービス費(1割負担分)はこの改正の対象ではありません。
今回の改正で、これまで「多床室」と一括りにされていた区分が、Ⅰ・Ⅱ・Ⅲの3つに分けられました。
| 区分 | 該当施設 | ポイント |
|---|---|---|
| 多床室Ⅰ | 特養の多床室 | 長期生活の場 |
| 多床室Ⅱ | 老健・医療院の多床室 (室料を徴収する場合) | 「室料あり運用」の施設 |
| 多床室Ⅲ | 老健・医療院の多床室 (室料を徴収しない場合) | 室料なし運用は据え置き |
老健や介護医療院では、施設によって「室料を徴収するか・しないか」の運用が分かれており、これまでの一律基準では実態に合わないケースが出ていました。今回の改正は、その実態に即した負担調整を狙っています。
書類の中に「現在お父様は第◯段階、8月からも第◯段階です」と明記されているのが理想です。記載がなければ、施設のケアマネかケースワーカーに必ず確認しましょう。
「居住費が日◯円→◯円に変わります(月◯円増)」のような具体的な数字があるか確認。「制度が変わります」とだけ書かれている書類は不親切です。担当者に「うちの母の場合、月いくら上がりますか?」と直接聞いてOKです。
ほとんどの場合、サインは「説明を受けたことの確認」です。「金額の変更を承諾します」というニュアンスで書かれているケースもありますが、いずれにせよサインをしない=制度から外れる、ということではありません。
冒頭でいただいた「サインしたらあとはお任せでいいんですよね?」というご質問。答えは、お任せ部分と、家族でやることの両方があります。
① 毎年8月の負担限度額認定証の更新申請
負担限度額認定証の有効期間は最長1年(毎年8月1日〜翌年7月31日)。毎年7月頃に市町村から更新申請書が届くので、忘れず提出してください。
② 預貯金の通帳コピー提出
更新時には、本人と配偶者の全口座の通帳コピーが必要です。ネット銀行・証券・保険会社の積立も対象になることがあります。
③ 状況が変わったら段階変更届
下記が変わったら速やかに市町村へ届け出を:
④ 「気づいたら段階が変わって差額請求」を防ぐ
預貯金が上限を超えると、その時点で認定が無効になり、後日第4段階扱いで遡及請求されるケースがあります(数万円〜数十万円)。通帳残高は最低でも年に1回チェックを。
2026年8月以降に発行される認定証は、多床室がⅠ・Ⅱ・Ⅲに分けて書かれる新様式になります。
つまり、いますぐ新しい認定証が届くわけではありません。更新月(多くの方は毎年8月)の時点で新様式に切り替わるイメージです。
第3段階②の方で月+約4,800円。「今でもギリギリなのに…」というご家族からのご相談、本当に増えています。選択肢は意外とあります。一人で抱え込まず、まず相談してください。
まずはここ。具体的な金額の試算や、施設内での減免制度(ある場合)について確認できます。
段階の判定に疑問があるとき、預貯金の解釈に迷うとき、まず聞くのはここです。
1ヶ月の介護サービス費の自己負担額が一定額を超えると、超過分が払い戻しになる制度。食費・居住費は対象外ですが、介護サービス費分は対象です。
1年間の医療費と介護費の合計が一定額を超えると払い戻しになる制度。入院と入所が両方ある方は特に確認を。
緊急で生活費が足りないときの貸付。
預貯金が尽きてしまった場合、生活保護の対象になることもあります。施設に入っていても申請できます。
「自分は関係あるの?」と迷ったら、請求書を出している施設のケアマネにひと言聞くのが一番早いです。